屋根塗装は自分でできる？DIYの手順・道具・リスクをプロが解説

「屋根塗装って高いな…自分でやったら安く済むんじゃ？」
そう考えたことがある方も多いのではないでしょうか。確かにDIYで屋根塗装を行えば、業者に依頼するよりも費用は抑えられるかもしれません。

しかし、屋根塗装は外壁よりも高所作業・下地処理・塗装技術の難易度が高く、失敗した場合のリスクも大きい工事です。
この記事では、元職人の視点から「屋根塗装は自分でできるのか？」を徹底検証し、必要な道具・手順・費用・注意点まで詳しく解説していきます。

屋根塗装を自分でやろうと考える理由とは？

最近、「屋根塗装を自分でやってみようかな」と考える方が増えています。
その背景には、いくつかの共通した動機や時代的な流れがあります。

1. 業者の見積もりが高く感じるから

一番多いのは、「業者に頼むと費用が高すぎる…」という金銭的な理由です。
実際、30坪の戸建てでも屋根塗装には50万円〜80万円前後かかることが一般的で、予想以上の見積もりに驚く方も少なくありません。

それに対してDIYで行えば、塗料や道具を自分で揃えるだけで10万円以内に収まる可能性もあり、費用面での魅力を感じるのは自然なことです。

2. ネットや動画でDIY情報が手に入りやすくなった

YouTubeやDIYブログなどで、素人でもできそうな塗装手順を紹介するコンテンツが増えています。
「これなら自分にもできるかも」と思わせる内容も多く、心理的ハードルが下がっているのも一因です。

特に外壁よりも屋根の方が「他人の目に触れにくい」という理由から、試しにやってみたいという人が挑戦しやすい傾向があります。

3. ホームセンターやネットで道具が手に入る時代

昔に比べて、塗料・刷毛・ローラー・脚立・安全帯などの道具が、誰でもネットやホームセンターで簡単に買える時代になりました。
「材料と手順がわかれば、なんとかなるのでは？」と考える方も増えています。

とはいえ、屋根塗装には高所作業・塗膜の密着性・下地処理の知識など、見た目以上に高度なスキルが必要になります。
次の章では、実際にDIYで屋根塗装を行う場合に必要な「道具・材料」について具体的にご紹介していきます。

屋根塗装DIYに必要な道具と材料リスト

屋根塗装を自分で行うには、プロ並みとはいかなくても、最低限の道具と材料をきちんと揃えることが必須です。
ここでは、DIYに挑戦する際に必要な基本的アイテムをカテゴリ別に紹介していきます。

1. 塗装作業に必要な基本道具

道具名	用途
ローラー／刷毛	塗料を屋根に塗るための基本ツール
塗料バケット	塗料を入れて使いやすくする容器
マスキングテープ	塗らない箇所を保護する（養生）用
養生シート	雨樋・壁・窓などに塗料が飛ばないように覆うため
スクレーパー／皮スキ	汚れや古い塗膜を削り取るため
ワイヤーブラシ	サビ取りや細かい汚れの除去
高圧洗浄機（レンタル可）	コケやカビ、汚れの除去（洗浄作業に必須）
下塗り用プライマー	塗膜の密着力を高める下地処理剤

2. 塗料と付属品

品名	特徴・注意点
屋根用塗料（中・上塗り）	耐熱・耐水性がある「屋根専用」塗料を選ぶこと
シーラー／プライマー	下地との密着力を高める。材質に合ったものを使用する
希釈用シンナー（必要に応じて）	塗料の粘度を調整するため。塗料の種類に合わせて選定

※塗料は屋根の材質（スレート／金属など）に合ったものを選ぶことが重要です。

3. 安全対策用の道具（最重要）

道具名	理由
安全帯（命綱）	落下防止のため。高所作業には絶対必須
ヘルメット	落下物・転倒時のケガ予防
作業靴（滑り止め付き）	屋根上での滑落防止
ゴーグル／手袋	塗料やゴミからの保護用
脚立または足場	屋根への昇降、作業時の安全確保

※高所作業は「安全装備をケチると命に関わる」と言っても過言ではありません。必ず揃えましょう。

注意：足場の設置は個人では難しい

住宅用足場の設置には専門的な技術と資格、さらには法令遵守も必要です。
個人での設置・解体は現実的ではなく、多くの場合は業者への依頼かレンタルが必要になります。

次の章では、これらの道具を揃えたうえで、実際の屋根塗装の作業をどのようなステップで進めていくのか？をわかりやすく解説していきます。

自分でやる場合の塗装手順をステップ解説

屋根塗装をDIYで行う場合、ただ塗るだけではすぐに剥がれたり、耐久性が保てません。
正しい手順で作業を進めることが、仕上がりと塗装の寿命を左右します。

ここでは、初心者でも理解しやすいように、屋根塗装の基本的な作業の流れをステップごとに解説します。

ステップ①：安全対策と足場・昇降ルートの確保

作業前にまず確認すべきは「安全の確保」です。
屋根は滑りやすく、風の影響も受けやすいため、命綱（安全帯）・滑り止め付きの靴・ヘルメットは必須。
脚立だけで済ませるのは極めて危険です。安全確保ができない場合はDIYは中止しましょう。

ステップ②：高圧洗浄で汚れを落とす

最初の作業は屋根表面の洗浄です。
コケ・カビ・汚れが残っていると塗膜が密着せず、塗料が数年で剥がれてしまう原因になります。

• 高圧洗浄機を使用（家庭用より業務用が望ましい）
• 洗浄後は24時間以上の乾燥が必要

ステップ③：下地補修（ひび割れ・サビ処理）

屋根に傷みがある場合は、ひび割れの補修や、金属部分のサビ落とし＋サビ止めを行います。
この工程を省略すると、塗料の下から劣化が進行するため意味がなくなってしまいます。

ステップ④：下塗り（プライマー・シーラーの塗布）

下塗りは塗料の密着力を高める接着剤のような役割です。
屋根の材質（スレート・トタン・ガルバリウムなど）によって使用する下塗り材が変わるため、塗料とセットで適切なものを選ぶ必要があります。

ステップ⑤：中塗り → 上塗り（仕上げ2回）

• 中塗り：希望する色の塗料を1回目に塗布
• 上塗り：同じ塗料で2回目を塗布し、色ムラ・膜厚を均一にする

※メーカー推奨の乾燥時間（4〜6時間以上）をしっかり守ることが重要です。
塗り重ねが早すぎると、剥がれやムラの原因になります。

ステップ⑥：確認・養生撤去・後片付け

塗り残しやムラがないか最終チェックし、養生シートを外して作業終了。
脚立や道具の後片付け、安全確認までを終えて初めて「完成」となります。

DIYにかかる費用と時間はどれくらい？

屋根塗装を自分で行う場合、気になるのは「結局いくらかかるのか？」そして「どのくらいの期間で終わるのか？」という点です。
ここでは、実際にDIYした場合の費用感と作業日数の目安を、30坪前後の一軒家を想定してご紹介します。

材料費の目安（30坪・屋根面積80〜100㎡の場合）

項目	費用目安（税込）	補足
塗料（下塗り＋上塗り）	20,000〜40,000円	耐久グレードにより価格差あり
養生・ローラー類	5,000〜10,000円	ローラー・バケット・テープ類など
高圧洗浄レンタル費	5,000〜10,000円	1日〜2日のレンタルでOK
安全装備（ヘルメット等）	5,000〜15,000円	命綱・滑り止め靴含む

合計目安：35,000円〜75,000円程度

足場代はDIYでも原則必要（外注になることが多い）

• 一般住宅の足場設置費用：約10万〜20万円（外注が必要）
• 足場なしで脚立のみで作業するのは極めて危険かつ非推奨

つまり、「DIYでも足場は業者に頼む」ケースが多く、足場代だけで業者見積もりの30〜40％を占めることになります。

作業時間の目安（日数）

工程	所要時間（目安）
高圧洗浄	半日〜1日
下地補修＋乾燥	半日〜1日
下塗り	半日〜1日（乾燥含めて24時間）
中塗り・上塗り	各1日（間に乾燥時間を確保）
養生撤去・片付け	半日

トータル：最低でも3日〜5日、余裕を見て1週間

特に天候によって中断が入ることもあるため、連続した晴天日を確保する必要があります。

結論として、DIYの費用は業者に比べて20万〜30万円ほど安くなる可能性はありますが、安全対策・時間確保・施工技術のすべてが求められるため、決して“手軽”ではありません。

次の章では、DIYのメリットとデメリットを冷静に比較し、自分にとってベストな選択肢かどうかを整理していきます。

屋根塗装DIYのメリット・デメリット

屋根塗装を自分でやるという選択は、費用を抑えられるという面で確かに魅力があります。
しかし一方で、安全性や仕上がりの品質など、見逃せないリスクも伴います。

ここでは、屋根塗装DIYのメリットとデメリットを冷静に比較してみましょう。

【メリット】

1. 工事費を大きく節約できる

最大のメリットはやはりコスト削減です。
業者に依頼した場合に比べて、20万円〜40万円以上節約できる可能性があります。
特に塗料代や人件費の削減効果は大きく、DIYならではの魅力です。

2. 自分のペースで作業ができる

業者に工事日程を合わせる必要がなく、休日や空いた時間を活用して進められるのもDIYの利点です。
スケジュールを自分で調整できるため、忙しい人にはメリットに感じることも。

3. 塗料や仕上がりを自分で選べる

使いたい塗料や色にこだわりがある場合、自分で選んで施工できる自由度の高さはDIYならではです。
メーカーサイトや実店舗で色を確認して選べるのも利点です。

【デメリット】

1. 高所作業によるケガのリスクが大きい

最大のリスクは「落下事故」などのケガや命の危険」です。
プロでも屋根作業は危険を伴うため、安全装備が不十分な状態でのDIYは非常に危険です。

2. 技術不足による塗装不良

塗装の厚み・塗りムラ・乾燥時間など、素人には難しい工程が多いため、仕上がりがプロと比べて劣る可能性が高いです。
うまく密着しなければ、2〜3年で塗膜が剥がれることも。

3. 失敗しても保証がない

業者に依頼した場合は保証（5〜10年など）が付きますが、DIYには当然ながら保証がありません。
万が一塗装がすぐ剥がれても、すべて自己責任となります。

4. 足場や工具の手配が大変

足場の外注、道具の購入やレンタル、廃材処理など、裏方の作業もすべて自分で行う必要があるため、想像以上に手間がかかります。

「費用は抑えたいけど、命に関わるような作業や仕上がりの失敗は避けたい」
そんな方は、次の章で紹介する「よくあるDIY失敗例とその代償」もぜひ参考にしてみてください。

実際によくある失敗例とその代償

屋根塗装のDIYは、うまくいけば費用を大きく抑えられますが、失敗した場合にはそれ以上の出費やリスクを抱える可能性もあります。
ここでは、実際にありがちなDIYの失敗パターンと、その結果どんな代償を負うことになったかをご紹介します。

1. 高圧洗浄や下地処理を省いて塗膜が剥がれた

最も多い失敗例が「すぐに塗膜が剥がれてしまった」ケースです。
原因の多くは、高圧洗浄を丁寧に行わなかったこと、または下地補修やプライマーを省略したことによるものです。

▶ 数ヶ月〜1年程度で剥がれが始まり、再塗装のやり直しに数十万円が必要に。

2. 塗料の選定ミスで耐久性が極端に落ちた

塗料の知識がないまま、「安かったから」「見た目が良かったから」と選んだ結果、屋根材と相性が悪く、耐久性が持たなかったという事例も少なくありません。

▶ 本来10年以上持つはずが、3年以内に再劣化して費用と手間が倍増。

3. 塗りムラ・色ムラで見た目が悪くなった

ローラーの使い方や乾燥時間の管理不足により、塗装面がまだらになったり、色ムラが出てしまったりすることもあります。

▶ 結局見た目が気になり、プロに頼み直して余計な出費に。

4. 足場なし作業でケガ・事故に

脚立だけで作業した結果、転倒・転落事故を起こすケースは非常に危険です。
屋根の勾配や風の強い日などは特にリスクが高く、「ちょっとだけだから」と甘く見ると大事故に繋がります。

▶ 軽傷で済めばまだ良いですが、骨折・入院・最悪死亡事故も起きています。

5. 近隣トラブルに発展するケースも

塗料の飛散・高圧洗浄時の騒音・作業中の大声など、ご近所に迷惑をかけてしまうことでトラブルになる可能性もあります。

▶ 特に養生不足で隣家の車や窓に塗料が飛んだ場合、損害賠償に発展することも。

DIYは「失敗しても自己責任」として片づけられる世界です。
だからこそ、「やってみる」の前に「やめておいた方がいい条件」を知ることがとても重要です。

次の章では、法律や安全面での注意点をまとめて解説します。

法律・安全面で気をつけるべきポイント

屋根塗装をDIYで行う際は、作業のやり方だけでなく、法律面や安全面での制限やリスクにも十分注意が必要です。
知らずに進めてしまうと、法令違反や保険対象外になるケースもあるため、この章でしっかり押さえておきましょう。

1. 高所作業は「労働安全衛生法」の規制対象になることも

一般家庭で自分の家を塗る分には問題ありませんが、友人や知人の屋根を手伝った場合、有償・無償に関わらず労働とみなされる可能性があり、労働安全衛生法の対象になるケースがあります。

特に2m以上の高さでの作業は「墜落防止措置（安全帯等）」が義務付けられるため、装備がない状態での作業は法的にもアウトになりかねません。

2. 足場設置は「建築基準法」の範囲内

足場の設置は仮設構造物として扱われるため、業者であれば資格や届出が必要になることもあります。
個人が自宅で簡易的に行う分には問題になりにくいものの、設置中の事故・通行人への落下などが発生すれば損害賠償責任が発生します。

3. 火災保険・補助金・保証が受けられない

屋根塗装に関しては、火災保険や自治体の補助金制度が適用されるケースがあります。
しかし、これらは「施工業者による適切な工事」であることが前提です。

つまり、DIYでの施工は対象外。
また、工事後に問題があっても自分で塗った場合は一切の保証がないため、リスクが大きいです。

火災保険や助成金・補助金については下記の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
▶︎【保存版】外壁塗装×火災保険｜通りやすさ・対応スピードを保険会社別に忖度なしで評価！
▶︎知らないと損する！外壁塗装の補助金・助成金制度【今すぐ申請OK｜完全保存版】

4. 事故が起きた場合は自己責任

ケガや転落はもちろんのこと、隣家や通行人への被害（塗料の飛散や破損など）があった場合も、当然すべて自己責任。
業者であれば賠償保険に加入していますが、個人DIYでは保険適用外がほとんどです。

DIYで屋根塗装を行う場合、「やってはいけないライン」や「ルールを守る重要性」を理解しておくことが、トラブル回避につながります。

次の章では、「自分でやるべきか」「プロに任せるべきか」を判断するためのチェックリストをご紹介します。

プロに頼むべきか？判断のためのチェックリスト

屋根塗装をDIYでやるべきか、それとも業者に依頼すべきか――この判断は、人によって最適解が変わります。
そこでこの章では、判断に迷っている方のために、プロに依頼すべきかどうかのセルフチェックリストを用意しました。

それぞれに当てはまる数が多いほど、業者に依頼したほうが安全で確実な選択となります。

✅ DIYに向いている可能性がある人

• 高所作業に慣れていて、体力にも自信がある
• 建築・塗装関係の仕事経験がある
• 必要な道具・安全装備をそろえられる
• 築年数が浅く、劣化が軽度な屋根
• 時間に余裕があり、作業を数日に分けて行える
• 費用を最優先に抑えたい

⚠ プロに頼んだほうがいい人

• 高所作業に不安がある・バランス感覚に自信がない
• 作業時間を確保できない（平日忙しい、短期間で終わらせたい）
• 屋根の劣化が進んでおり、補修が必要な状態
• 足場を設置する手配ができない
• 火災保険や補助金の活用を検討している
• 仕上がりの品質を重視したい
• 自分で失敗したら責任を取れないと思っている

実際、筆者（元塗装職人）としての立場から言えば、「DIYでの屋根塗装は9割の方におすすめしません」。
その理由は、これまでの章で述べた通り、費用以上に高い代償やリスクを背負う可能性があるからです。

もし少しでも迷っているのであれば、一度見積もりだけでも取ってみて、金額と内容を比較した上で判断するのが正解です。

次の章では、この記事の内容を総まとめしながら、「DIYを成功させるために必要な条件」や「最終的な選び方」について解説していきます。

まとめ｜DIYは可能だが、条件次第で危険も

屋根塗装は、確かに自分で行うことも“技術的には”可能です。
必要な道具を揃え、手順を守って丁寧に作業を進めれば、費用を大きく抑えることもできるでしょう。
しかしその一方で、屋根塗装には高所作業による事故リスク、仕上がり不良、耐久性不足、安全装備の不備、保証なしといった、DIYならではの大きなハードルが存在します。

特に、足場を設置せずに作業を強行したり、塗料や下地処理を誤ったりすれば、かえって高くつく結果になることも少なくありません。
さらに、火災保険や補助金が使えない、近隣トラブルや法的リスクがあることも、多くの方が見落としがちです。

「費用が安いから」「やってみたかったから」という動機だけでは乗り越えられない壁が、屋根塗装にはあるのです。

そのため、もし少しでも「安全にできる自信がない」「高所作業が不安」「仕上がりに後悔したくない」という気持ちがあるなら、無理をせずにプロに相談することをおすすめします。
最近では、一括見積もりサービスや無料点検を行ってくれる優良業者も多く、相場を比較しながら納得して選べる時代になっています。

DIYでの挑戦も選択肢のひとつですが、それが正解かどうかは「あなたの状況次第」です。
まずは情報を集め、慎重に比較検討することが、後悔しない屋根塗装につながります。