屋根塗装に足場は本当に必要？足場なし施工の可否と注意点

屋根塗装の見積もりを見て、「なんでこんなに足場代が高いの？」と驚いたことはありませんか？
実際、30坪前後の住宅でも足場代だけで10万円〜20万円かかることが多く、「それなら足場なしでやってくれないの？」と感じるのは自然なことです。

ですが、屋根塗装における足場は単なる“作業の足元”ではなく、安全性・施工品質・法律遵守に直結する極めて重要な存在です。
この記事では、屋根塗装に本当に足場が必要なのか？足場なしでの施工は可能なのか？を、プロの視点からわかりやすく解説します。

屋根塗装の見積もりにおける「足場代」の存在感

屋根塗装の見積もりを見て、最初に「えっ？」と驚かれることが多いのが足場代の高さです。
一般的な30坪の戸建て住宅でも、10万〜25万円程度の足場費用が発生するのが通常で、全体費用の約2〜3割を占めることもあります。

実際、「塗装工事よりも足場の方が高く感じる…」という声も少なくありません。
では、なぜこんなにも足場代が高くなるのでしょうか？その理由を解説します。

足場代の内訳とは？

足場にかかる費用は、以下のような項目に分かれています。

• 足場資材の運搬・設置・解体作業費
• 飛散防止ネット（メッシュシート）の取り付け
• 安全対策費（作業員の労務・手当含む）

このように、足場は単なる「骨組み」ではなく、安全と作業効率を確保するための専門工事なのです。

足場費用は「㎡単価」で決まる

足場代は基本的に「延べ面積×単価（㎡あたり600〜1,000円前後）」で計算されます。
そのため、屋根の勾配がきつかったり、2階建て以上の住宅だったりすると、足場の面積も大きくなり費用が上がる傾向にあります。

築年数が古いほど足場が重要になることも

築年数が20年、30年と経過している住宅では、外壁や下地の劣化が進んでおり、慎重な施工が求められるケースが多いです。
こうした場合、職人が安心して作業するためにも、より安定した足場が必要となる＝費用も高くなる可能性があります。

足場代は確かに高額ですが、それだけ安全性と施工品質に直結する「必要経費」としての意味を持ちます。
次の章では、そもそも「屋根塗装で足場がなぜ必要とされるのか？」という本質に迫ります。

足場はなぜ必要？屋根塗装における3つの役割

屋根塗装において「足場が高すぎる」「なくても塗れるのでは？」という疑問はよく聞かれます。
しかし現場経験者から言わせていただくと、足場はコストではなく「必要条件」です。
ここでは、屋根塗装における足場の主な役割を3つの観点からご紹介します。

1. 職人の安全を確保する

最も重要な理由は作業員の命を守るためです。
屋根は高所かつ傾斜があり、少しの油断が重大事故や転落死につながる危険な場所。
足場がなければ、安全帯の取り付け位置もなくなり、命綱すら意味をなさない状況になってしまいます。

特に2階建て以上の建物や急勾配の屋根では、足場なしでの作業はプロでも原則NGです。

2. 施工品質を安定させる

足場があることで、職人は姿勢を安定させて丁寧な作業ができる環境を確保できます。
足元が不安定なままでは、ローラーや刷毛を正しく扱えず、塗りムラ・塗り残し・塗膜の厚み不足といった仕上がり不良のリスクが高まります。

さらに、高圧洗浄・養生・補修作業も安全かつ的確に行えるため、工事全体の品質が向上するのです。

3. 労働安全衛生法など法律で義務化されている

実は、2m以上の高所での作業には「墜落防止措置（足場や安全帯の設置）」が法令で義務化されています（労働安全衛生規則第518条など）。

つまり、足場を設置せずに屋根塗装を行うと、法律違反に該当するケースがあるということ。
もし事故が起きた場合、発注者（施主）にも責任が問われる可能性があるため注意が必要です。

以上のように、足場には「安全」「品質」「法令遵守」という3つの重大な役割があり、単なる作業台ではありません。

では、実際の現場では足場なしの屋根塗装が行われているのか？ 次の章では、その実態と「例外的に可能なケース」を詳しく解説します。

足場なし施工はできる？現場での実態を解説

「足場代がもったいないから、足場なしで塗れませんか？」という問い合わせは、実際の塗装現場でもよくあります。
では、屋根塗装は本当に足場なしでできるのか？ 現場の実態を正直にお話しします。

条件次第では足場なしで塗装されることもある

ごく一部の条件では、足場を使わずに屋根塗装が行われるケースも存在します。
たとえば以下のような場合です：

• 平屋建てで屋根の勾配が緩やか（2寸以下）
• 周囲に障害物がなく、脚立や屋根足場で作業できる
• 職人が命綱や安全帯を適切に設置できる場合

このような場合、リスクを限定できることから、「完全自己責任」で作業されることがあります。

ただし、職人側もリスクが高く敬遠されがち

足場がないということは、作業効率が大幅に落ち、安全性も損なわれるということ。
多くの職人は命を守るため、「足場がない現場では作業を受けない」と判断します。

また、万が一事故が起きた場合に保険が適用されないこともあるため、
「安くする代わりに足場なしで」とお願いしても、優良業者ほど断る傾向にあります。

保険・保証・行政対応にも影響する

足場なし施工は、以下のような問題を引き起こす可能性があります：

• 労災保険が適用外になる可能性
• 損害保険（賠償・施工保証）が使えないケースがある
• 火災保険・補助金制度が非対象になることも

つまり、万が一のときに「自腹・無保証」になるリスクが高まるということです。

足場なし施工が可能なケースは、あくまでごく限定的な状況下で、十分な安全対策と経験をもつ職人に限られることがほとんどです。

次の章では、足場を使わずに屋根塗装を行った場合に起こり得るリスクやトラブル例を詳しく解説していきます。

足場なしで屋根塗装する場合のリスクとは？

「足場がなくても塗装はできるでしょ？」と思ってしまいがちですが、実際には多くの重大なリスクを伴います。
ここでは、足場なしで屋根塗装を行った場合に起こりやすいトラブルと、それによって発生する代償について解説します。

1. 転落・重大事故の危険が高まる

足場がない状態での屋根作業は、命綱を確実に固定できない・足元が不安定・緊急時の退避ができないという危険が常につきまといます。
実際、建設現場での死亡事故の約3割は「高所からの転落」とされており、命に関わるリスクを軽視することはできません。

2. 施工不良が発生しやすくなる

足場がなければ、職人は不安定な姿勢で塗装せざるを得なくなり、以下のような施工ミスが発生しやすくなります。

• 塗りムラ・色ムラが発生する
• 塗布量が均一にならない
• 雨樋や棟板金などの細部に手が届かず塗り残しが出る
• 塗膜の厚み不足により耐久性が大幅に低下する

その結果、通常10年以上持つはずの塗装が数年で剥がれてしまうこともあります。

3. 近隣への被害・トラブルが起こる

足場には、塗料の飛散を防ぐための「飛散防止ネット（メッシュシート）」が設置されます。
これがない状態で塗装作業を行えば、風に乗って隣家の車や壁に塗料が飛ぶ・高圧洗浄の水が飛散するなど、ご近所トラブルの原因になりかねません。

▶ 損害賠償や信頼失墜につながるリスクも。

4. 火災保険・補助金対象から外れる可能性

自治体のリフォーム補助金や火災保険を使った屋根修理・塗装を申請する際、「足場ありの適切な工事」であることが条件となっているケースが多いです。

▶ 足場を使っていない＝不適切施工と判断されると、申請が通らなくなる恐れがあります。

これらのリスクを踏まえると、「多少費用が上がっても、安全で確実な施工を選ぶ方が結局得だった」と実感される方がほとんどです。

次の章では、こうしたリスクに関連する法律・保険・責任問題を詳しく解説します。

法律と保険の観点から見た「足場なし」の問題点

屋根塗装における「足場の有無」は、費用や作業効率の問題だけではなく、法律や保険、さらには施主側の責任リスクにも大きく関わってきます。
この章では、足場なしで施工を行った場合に起こりうる法的・保険的な問題点をわかりやすく解説します。

1. 労働安全衛生法に違反する可能性

労働安全衛生法では、2m以上の高所作業には「墜落防止措置（足場や安全帯）」の設置が義務とされています（労安法 第21条、安衛則 第518条など）。

つまり、職人が足場なしで作業していた場合、

• 作業者本人はもちろん
• 施工業者
• そして施主（依頼者）までもが責任を問われる
  ケースがあります。

重大事故が起きた場合は、刑事責任や民事訴訟のリスクも発生するため注意が必要です。

2. 労災保険・損害保険が適用されない可能性

もし足場を設置せずに屋根塗装を行い、作業中に事故が発生した場合、
労災保険や業者側の損害賠償保険が「適用除外」になるケースもあります。

その理由は、

• 安全基準に反した作業が行われた
• 業者が保険未加入だった
• 施主が「足場不要」を強く要求した
  といった状況が原因です。

この場合、施主に損害賠償請求が及ぶリスクもあるため、「足場代を節約したい」が結果的に高額な出費に繋がることも。

3. 建築基準法・道路交通法との関係もある

足場の設置場所によっては、建築基準法や道路使用許可申請（道路交通法）が関わるケースもあります。
「勝手に足場を設置した」「飛び出して通行人に当たった」となれば、行政処分や過失責任が発生する可能性もあります。

4. 契約トラブル・施工保証対象外になる可能性

足場を省略した結果、

• 塗料が数年で剥がれた
• 雨漏りが発生した
  などの不具合が出ても、業者から「これは足場を使わなかったから仕方ない」と保証を拒否されるケースもあります。

業者選びや契約時に、「足場なしによるデメリット」が十分に説明されていない場合、後悔するリスクが非常に高いのです。

次の章では、そんな「足場を使わずに施工する業者」は信用して良いのか？という疑問に対して、見極め方と注意点を解説します。

足場を使わずに塗装する業者は信用していいのか？

見積もりを依頼した業者が「足場なしでもできますよ」「その分お安くします」と言ってきたとき、
「親切な業者かも？」と思うかもしれません。
しかし、その判断は非常に慎重に行うべきです。

この章では、足場を使わない業者に対する見極め方と注意点を解説します。

1. なぜ足場なしでできると言うのか？理由を確認

まずは業者に「なぜ足場が不要なのか？」をしっかり聞きましょう。
以下のような説明があれば、少し注意が必要です：

• 「足場なくてもウチは慣れてるから大丈夫」
• 「安全帯をつければOKです」
• 「うちは格安対応なので足場代は省いてます」

このような回答には共通して、安全性・法令・保証の話が抜けていることが多いのが特徴です。

▶ 説明が曖昧な業者には要注意です。

2. 工程ごとの管理が不透明になる

足場があると、以下のような作業が丁寧かつ段取り良く進められます：

• 高圧洗浄のしっかりした施工
• 養生・塗装の細かい作業
• 作業後の最終チェックと補修

しかし、足場なしだと目視が甘くなる・届かない箇所が出る・作業の記録が残りにくいといった問題が起こりやすく、
手抜き工事の温床になるケースもあります。

3. 「格安業者＝優良業者」とは限らない

相場より明らかに安い見積もりを出す業者は、

• 足場を省略してコストカット
• 人件費を削るため作業が粗い
• 保険・保証が不十分 or 未加入
  という可能性があります。

「足場を組まない＝作業の質と安全を軽視している」と見なされることも多く、安さの裏には理由があるという意識を持つことが大切です。

4. しっかりした業者は「足場の必要性」を説明してくれる

信頼できる業者ほど、足場の必要性についてこう説明してくれます：

• 「安全面と品質確保のために必要です」
• 「法令上、弊社は足場なし施工はお受けできません」
• 「逆に足場代以上のトラブルリスクが出ます」

こうした誠実な対応が、結果的に満足度の高い塗装につながることを多くのお客様が実感しています。

では、どうすれば足場代をできるだけ抑えつつ、安全性と品質を確保できるのでしょうか？
次の章では、足場代を節約するための3つの現実的な方法をご紹介します。

足場代を節約したい人のための3つの現実的対策

「足場の重要性は理解できたけれど、やっぱり高い…」「できることなら少しでも安くしたい」
そんな方に向けて、この章では安全性を損なわずに足場代を抑えるための3つの現実的な対策をご紹介します。

1. 外壁塗装と屋根塗装を同時に行う

屋根塗装だけでなく外壁もそろそろ…という場合、必ず「セット施工」を検討すべきです。なぜなら、足場は屋根・外壁問わず共通で使えるため、別々に施工すると足場代が2倍かかることになるからです。

▶ 同時施工なら足場代を1回分で済ませられる＝10万〜20万円以上の節約効果が期待できます。

2. 複数業者から相見積もりをとる

業者によって足場費用の算出基準や管理コストは異なるため、1社だけの見積もりでは適正価格がわかりません。

相見積もりでチェックしたいポイントは以下の通り：

• 足場面積（㎡数）と単価の明記があるか？
• 他の業者と比べて極端に高くないか？
• 足場以外の項目（塗装費・養生・高圧洗浄など）のバランスも確認

▶ 価格交渉の材料にもなるため、少なくとも3社程度から見積もりを取りましょう。

3. 補助金や火災保険の活用を検討する

自治体によっては、屋根・外壁塗装に補助金や助成金を出しているところもあります。
また、風災・雪害・ひょうなどで屋根に被害があった場合は、火災保険を使って修繕費や足場代をカバーできるケースも。

確認すべきは：

• 居住している市区町村の住宅リフォーム補助金の有無
• 火災保険での「屋根の損傷写真」と「工事見積書」の提出条件
• 申請サポートに対応してくれる業者かどうか

▶ これらをうまく活用すれば、足場代実質無料になることもあります。

「安全性は妥協したくないけど、コストも抑えたい」という方は、
まずセット施工＋相見積もり＋補助金確認の3ステップを検討してみることをおすすめします。

火災保険については「外壁塗装×火災保険｜通りやすさ・対応スピードを保険会社別に忖度なしで評価！」でも解説しているので、ぜひご覧ください。

次の章では、ここまでの内容を踏まえて「結局、足場ありと足場なしでどちらが得なのか？」を総合的に比較していきます。

結局、足場ありとなしではどちらが得か？

ここまでの内容を踏まえると、「足場を使うか使わないか」で迷っている方にとって、判断の基準が見えてきたのではないでしょうか。

この章では、「費用」「安全」「品質」「将来的なリスク」などの観点から、足場あり vs 足場なしを総合的に比較し、どちらが本当に「得」なのかを検証していきます。

短期的には「足場なし」の方が安く見える

たしかに、足場を組まない場合は10万円〜20万円程度のコストが浮くため、一時的な出費は抑えられます。
業者によっては、「足場なしならこの価格で」と提示してくることもあるでしょう。

▶ ただし、これはあくまで“見た目の安さ”でしかありません。

中長期的には「足場あり」が圧倒的に得

足場を組まない場合、以下のようなコストが後から発生しやすくなります：

• 塗膜不良 → 数年で再塗装（再び費用発生）
• 施工不良による雨漏り → 内部修繕費用が高額に
• 事故・損害 → 保険が下りずに全額自己負担
• 補助金・火災保険の対象外 → 実質的な損失

これらを考慮すると、初期費用が高くても足場を使ったほうが、トータルで見て安心・確実・結果的に安上がりなのです。

安心感と信頼性も“足場あり”に軍配

• 安全対策がされている
• 作業工程が丁寧に管理される
• 万が一でも保証・保険が効く

こうした“見えないけど重要な価値”は、施主自身の不安やストレスを大きく軽減してくれます。

つまり、「足場代が高いから省く」ではなく、足場を含めた全体の施工品質と長期的な安心感を重視して判断することが、もっとも賢い選択だと言えます。

次の章では、ここまでの内容を総まとめし、足場の必要性をどう判断するべきかを明確に整理していきます。

屋根塗装に足場は必要？｜よくある質問

まとめ｜足場なしの判断は“安さ”だけで選ばないこと

屋根塗装における「足場」は、ただの作業台ではなく、安全・品質・法律・保険すべてに関わる極めて重要な設備です。

一見すると「足場代は高い」「なくてもできそう」と思ってしまうかもしれません。
しかし実際には、足場があることで職人が丁寧に、安全に、確実な施工ができる環境が整うという点において、非常に大きな役割を担っています。

もちろん、条件次第では足場なしで対応できるケースもゼロではありません。
しかしその場合は、塗装の質・事故リスク・保険・保証・近隣トラブルなど、あらゆるリスクを施主自身が背負う覚悟が必要です。

だからこそ、「少しでも安く済ませたい」という気持ちがあっても、「安さだけ」で判断してしまうのは危険です。
本当に後悔のない塗装工事を目指すなら、まずは複数社から見積もりを取り、安全性・価格・施工体制を冷静に比較することが第一歩となります。

足場の有無に迷ったときこそ、「長く安心できる家づくり」を軸に考えてみてください。
将来の再塗装リスクや思わぬ出費を減らすためにも、「必要なところにはしっかり投資する」という視点が結果的にお得になるはずです。